翻訳を楽しもう!(2)/「お嫁に行く」「嫁にもらう」

2017.10.5

「翻訳を楽しもう!目次」

今日の中国語は、数年前マクドナルドのCM用ショートムービーで話題になったこの言葉です。

「如果我30歲還沒嫁出去,你要娶我喔」

15歳の時から失恋する度に、慰めてくれる男友達にこう言い続けてきた女の子。最後に2人は結婚するようなのですが、Youtubeには15年間も「備胎bèitāi(スペアタイヤ)」扱いなんて酷すぎる等、手厳しいコメントが並んでいました。

「嫁jià(嫁ぐ、お嫁に行く)」「娶qǔ(娶る、嫁にもらう)」の基本的な意味は、日本語の用法から想像するものと同じ。でも、硬さや時代感等を考えると、そのままでは訳せません。

さて、あなたなら、どんな風に訳しますか?

解説

面白いと思うのは、「嫁jià(嫁ぐ)」「娶qǔ(娶る)」のような家制度と結びついた言葉が使われているところ。動画の中の男女の立ち位置と、使われている言葉の持つ意味が真逆なのです。

「嫁」の主語は必ず女性だし、「娶」の主語は必ず男性。だから、ドラマのプロポーズの定番セリフ「你願不願意嫁給我?」も、男性からしか言えない。女性からだと「你願不願意娶我?」となってしまいます。(実際にそういう人がいるかどうかは別ですが)

周囲の台湾人に聞いても、「結婚jiéhūn」というニュートラルな言葉との違いはあまり意識されていないようですが、全く同じかというとそうでもない。ジェンダーの問題に敏感な女性は、「嫁jià」「娶qǔ」という言い方に、ちょっと抵抗があるのだそうです。このニュアンスをどう訳すのか、結構悩ましい。

では、参考訳です。
A.もし30になってもまだお嫁に行ってなかったら、もらってちょうだいね。
B.もし30になってもまだ独身だったら結婚してよね。

直訳はAに近いのですが、これじゃまるで昭和中期のドラマ。ちょっと上から目線の動画の女の子のセリフとしては、Bの方が良い気がしますね。

 

以下の記事も参考にしてください。

台湾ドラマで中国語:こんな女、そんな女
台湾ドラマで中国語:はい。
台湾ドラマで中国語:この結婚
コラム:「結婚」の様々な「型」