【中国語学習のコツ】:nとngで悩んでいるあなたへ(2)

中国語学習のコツ、目次

日本人が中国語のnとngを難しく感じるのはどんな時なのかを、もう一度見てみましょう。

1.違いが聞き分けられない(先生の発音を何度聞いても、同じ音に聞こえてしまう)
2.区別して発音できない(何度も先生に直されてしまう、言いたいことが正しく伝えられない)
3.漢字の読み方が覚えられない(“ん”に似た音で終わるというのは覚えられても、nかngかが混乱してしまう)

hint

このうち、3の問題については、前回のコラムで解決ずみですね。今日は、1・2の問題に関する解決のヒントをお伝えしたいと思います。

子供の頃から始める場合と違い、大人になってから始める外国語学習では、耳で聞いた音をそのまま同じように真似ることが、なかなかできません。ましてや、その音を、翌日も1週間後も1カ月後も覚えておいて、同じように再現することなど、ほぼ不可能です。それができるのは、耳も記憶力も抜群によくて、口の周りの筋肉のコントロールも自在にできる、ごくごく一部の人だけでしょう。または、毎日その外国語のシャワーを浴びられる環境で、繰り返し繰り返し同じ音を聞き続けられるケースです。どちらも、普通の学習者には縁遠い話だろうと思います。

では、普通の学習者はどうすればよいのでしょうか。私のお勧めは、口の開け方、舌先の位置等をできるだけ具体的に覚えるという方法です。nとngのの場合は、入門・初級の教科書でよく次のような説明が出てきます。

n:案内(アンナイ)の“ン”のように舌先を上あごにぴったりつけて発音

ng:案外(アンガイ)の“ン”のように舌先を上あごにつけずに発音

私はこの原則をずっと律儀に守って発音していますが、これでほぼ伝わるようです。もちろん、前後に来る音等の影響で、少しずつ発音のバリエーションはありますし、ネイティブに近い発音ができるようになるにはかなりのトレーニングが必要ですが、上の原則を意識し、そこからぶれないようにしておくだけで、nとngの混沌状態から抜け出すことができるのです。後は、その音を基準にして、自分のできる範囲で音を調整していけばよいのだと思います。

日本人にとって、nとngを区別して発音することが、格別難しいわけではありません。「アンナイ」の“ン”と「アンガイ」の“ン”のように、普段からちゃんと使い分けているのですから。ただ、子供の頃に耳で覚えた日本語では、その差が自然にマスターできたけど、大人になってから学ぶ中国語では、耳で聞いただけでは差がわかりにくいという違いだけなのです。

 

次に、1の「違いの聞き分け方」の問題です。私自身、中国語の勉強を始めた頃には、nグループとngグループには、それぞれ共通する聞こえ方の特徴のようなものがあるのではないか、と思って一生懸命それを探していました。でも、しばらくすると、それはかなり難しいことがわかりました。だから、次のようなペアのaやeの聞こえ方の違いを、自分なりに特徴づけることから始めたのです(左は「エ」に近く聞こえ、右は単母音と似た音に聞こえる)。そうすると、この3組については、nとngの違いを聞き分ける必要がなくなります。

ian   — iang  en    ―    eng    uen  — ueng

 

また、次のように、n,ngのどちらかしかないものは、違いを聞き分ける苦労もありません。

üan—(×)üang       ün—(×) üng  (×)on—ong      (×) ion—iong

 

こうして残ったのは次の3組だけです。

an—ang     uan—uang   in—ing

これは、とりあえず気にしないでおきましょう!

この3組だけなら、違いが聞き分けられなくても、実際に使われる場面では、文脈があるのでそれほど大きな問題にはなりません。

 

前回のコラムにも書いたように、ネイティブでも、nとngの違いがよくわからない、という人もいます。アナウンサーや中国語の先生等のプロは別として、一般のネイティブは、nかngかを厳密に聞き分けているわけではなく、私と同じように、いろんな条件を重ねあわせ、ここで使われているのはこっちの音(漢字)に違いにない、という判断をしているのだろうと思います。

 

中国語のnとngで悩んでいる方の混沌状態を、解きほぐすことができればと思って書いたこの2回のコラム。少しでもお役に立てれば嬉しいのですが。

過去記事:「nとngで悩んでいるあなたへ(1)」