翻訳を楽しもう!(3)/壊れたのは何?

 2017.10.6

外来語を取り入れる時に、日本語はカタカナを使って音訳する事が多い。
中国語の方は、漢字を使った意訳が多い。

この差が、時々、日中翻訳の難しさにつながります。

これが、今日の例文です。壊れたのは、いったい何だと思いますか?

★錄音機壞了。

luyinji

ちなみに、上の画像はトラップです。引っかからないように注意しながら、訳してみてください。

 

解説

台湾人の同僚何人かにこの例文を見せて、「壊れたものは何?」と聞いてみると、みんなカセット式のレコーダーをイメージするのだと言います。上の画像はスマホのアプリのものですが、そんなものをイメージする人は誰もいません。

簡体字の中日辞典で「录音机lùyīnjī」を引いてみると、「テープレコーダー」「カセットデッキ」のような訳もあります。「テープレコーダー」は「カセット式」より一時代前の機器ですね。

では、なぜ同じ「錄音機lùyīnjī」という言葉が、昔の機器から今のアプリにまで対応できるのでしょうか?

それは、中国語の「錄音機lùyīnjī」が「録音する機械」としか言っていないからです。そのため、言葉そのものは、音を記録して残しておく媒体が、技術革新によってどのように変わっても対応できるのです。

 

これに対し日本語は、レコーダーという外来語が普及する際に、記録媒体の「テープ」まで入れてしまったことで、その後の技術革新の度に、言葉自体を変えて行くことになります。「カセットデッキ」「ラジカセ」「CDデッキ」「ICレコーダー」等と続き、今になってようやくオールマイティーの「ボイスレコーダー」という訳語が広まって来ている感じです。

だから、厳密に言うならば、今日の例文の訳語を考える際には、それが使われた時代背景等も考慮する必要があるということになりますね。

 

今はスマホやPCで簡単に録音できるため、そのための専用機器を買う人が激減しています。また、細長いICレコーダーには「錄音筆lùyīnbǐ」という専用の名前もあります。そういった理由もあって、「壊れた機械」として台湾の人たちの頭にまず浮かんだのは、「カセット式」のものだったのだろうと思います。

今日の参考訳です。

★カセットデッキが壊れた。