台湾ドラマで中国語

台湾ドラマから、気になるセリフを拾って解説しています。スラング、慣用句、成語、日本語との比較、音声と字幕のズレ、文法、社会問題等、様々な角度から中国語の面白さをお伝えします!

台湾ドラマで中国語、目次

「日中対照用語集(ピンイン付):台湾ドラマの基礎用語」も、どうぞ

8.稍息立正我愛你(4)/通信簿、通知表、成績表

 

今回注目していただきたいのは、字幕ではなく画面に映っているこの書類。

shaoxi7
(画像はLine TVからお借りしました)

一見何でもないように見えますが、実はツッコミどころ満載なのです。

ここで質問です。皆さん、この表のような書類のことを日本語で何と呼びますか?

ちなみに中国語ではこう呼びます。

成績單chéngjīdān

これを日本語に訳すとしたら、「通信簿、通知表、成績表」のうちどれが一番適切か、という問題です。

科目名がほとんどひらがななので、一見小学校低学年の「通信簿(又は通知表)」かと思れるかもしれませんね(最近は「あゆみ」を使うところが多いのかもしれませんが)。ところが、学年の欄は3年生までしかないのです。しかも、字幕の下の部分をよく見ると、「きそかいせき」と書かれています。小学校低学年の科目に基礎解析があったら困っちゃいますね。パパもママも。

実は、このドラマの設定では高校の通知表なのです。日本でずっと暮らしていた主人公の男の子が、台湾の高校二年生に編入するために、それまでの成績を担当の先生に確認してもらっています。

おそらく、ドラマの演出上、ひと目で日本のものとわかるようにという意図でひらがなにしたのでしょうが、いくら何でも高校の成績でこの書き方は不自然。しかも、「きそかいせき」ってひらがなで書くことはまずないかと・・・。

この記事を書いていて、もうひとつ面白いことに気づきました。日本では、同じように成績が書かれた書類でも、通信簿→通知表→成績表と対象年齢が上がりますね。小学校で「成績表」を使うと、どこかからお叱りを受けそうだし、高校や大学で「通信簿」もあり得ない。また、同じ高校でも、定期テストの結果が書かれたものは「成績表」で、平常点まで総合した成績や出席状況、所見等が書かれたものは「通知表」になりそうです。

これは、日本語を学ぶ外国人にとって、とても面倒な使い分け。そして、それだけではなく、日本語ネイティヴが中国語を日本語に訳す時に、気をつけなければならない問題でもあるのです。

例えば中国語で「成績單」と書かれていた場合、すぐに「成績表」と訳したくなりますが、上に書いたように、文脈によっては「通信簿/通知表」と訳した方がよい場合もありますね。

これは、中国語の「學生xuéshēng」の訳し方の問題とも似ています。翻訳に慣れないうちは、全部「学生」と訳してしまいがちですが、日本語では「小学校:児童」「中学校、高校:生徒」「大学:学生」と使い分けるので、「學生」の訳語もそれに合わせる必要があるのです。

 

ドラマの話題から離れてしまいましたので、最後に字幕を訳しておきます。

非常歡迎華僑學生歸國就讀(母国の学校に通いたいという華僑の生徒を歓迎する気持ちは強いのですが)

この後、否定的なセリフが続くので、それを前提に訳しています。

(2018.3.1)