2016.10.15

2016年に大ヒットした台湾ドラマ「後菜鳥的燦爛時代」。そのキーワードの訳し方がちょっと難しいのです。

“ひよっこ・新米・新人”を表す“菜鳥(càiniǎo)”という言葉は、すでにかなり知られていますが、これに“後”をつけて“後菜鳥(hòu càiniǎo)”とするとなかなかうまく訳せません。(詳細は「台湾ドラマで中国語:ひよっこ」をご参照ください)とりあえず、「新米以上一人前未満」ということはわかるのですが、訳語としては長すぎて、全然イケてない。

日本語の字幕をつけて放送しているホームチャンネルの邦題は、「華麗なる玉子様~スイート♡リベンジ」。中国語の原題が、ヒロインを中心とする職場での奮闘記をイメージさせるのに対し、邦題は完全に相手役のアーロンを意識した恋愛もの仕立てですね。ホームチャンネル公式サイトの説明を読むと、邦題の「玉子」も「菜鳥(新米・ひよっこ)」との関連ではなく、アーロン扮する紀文凱の学生時代のあだ名を意識したもののようです。

「後菜鳥」には「ベテラン新人」という訳語が当てられています。

 

2013年に書かれた「後菜鳥時代」的轉大人之道(“後菜鳥”が大人になるには)」という記事には、「後菜鳥」の特徴として次のような点があげられています。

● 年資不長不短,通常在3年上下,不是菜鳥,也還不是老鳥(勤続年数が長くも短くもない。普通は3年前後。新米でもないし、かといってベテランでもない。)

● 對工作開始出現疲乏和無聊,覺得好機會似乎總是輪不到自己,只有在旁乾瞪眼的份(仕事に対し疲れともの足りなさを感じ始めている。いいチャンスはいつも自分には回って来ず、傍らでやきもきしている役回り。)

● 想要改變,但又不知從何變起(このままじゃダメだと思っているけれど、どこから手をつけたらいいのかわからない。)

この他、「自分に与えられた仕事は全部できるからつまらない、でも上司から見ると新米と大差ない」等、自他の評価にズレがあるのが問題、というような解説もありました。

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台湾の職場環境が日本と違うのは、転職率が圧倒的に高いということです。日本人から見ると、「勤続年数3年前後」と言えばほとんど20代。でも、数年(数か月や数日というケースも!)で転職を繰り返す人の多い台湾では、30歳を超えても勤続年数が3年に満たない人がたくさんいます。

だから、「菜鳥」も「後菜鳥」も、日本人がイメージするよりずっと上の世代まで指すことになるし、それに該当する人もかなりの比率になるということですね。

蔡英文政権になって実施された「勤続年数の短い人たちの休暇制度の見直し」も、年齢ではなく「勤続年数」にポイントを当てたことで、対象範囲がグッと広がりました。

 

上記のドラマでも、「後菜鳥」と呼ばれる人たちは、当初、それなりの能力とプライドを持っているにも拘らず、一人前に仕事ができないという設定です。この皮肉な感じを訳すには、どうしたらいいんだろう・・・と悩んでいます。